看護学生パラレル
食事介助演習(1)
※基本的に友人同士?でコメディなんですけど一部この先空気が淫靡になると思います。
そのくせいつにもまして骸さんが暴走変態ハシャギ気味です。
「食事介助、か……」
授業が終わった後、机の上でとんとんとプリントを整理しながら綱吉は小さく呟いた。
今度の技術演習は食事介助の練習で、今日はそのための知識面での授業だった。
次の授業では、実際に実習室でベッドに横になったりして食事介助の演習をするという。
患者さんは全盲、しかも四肢麻痺で寝たきりという設定。仰向けに寝転んだ仰臥位で、目の見えないひとという設定だ。
ベッドはほとんど起こしてはダメ。聞くからに、食べ物を飲み込みにくそうだ…というより、ちゃんと食べられるのだろうか?
「なんか、次も時間かかりそうだなー…」
難しそうである。いつも、ただでさえ時間がかかってうんざり気味の演習だが、今回は更に時間がかかりそうな予感がしていた。
「面倒臭そうですね。次の演習」
ふぅとため息をつくと、横から聞き慣れた声が聞こえてきた。
「あ、やっぱり骸さんもそう思う?」
「相手も関係してきますからね。時間がかかりそうです」
いつも綱吉の隣の席を陣取る骸は、やれやれといった感じで肩をすくめた。
ちなみにここで言う「相手」とは綱吉のことである(強制的に骸がいつも、同グループの綱吉を演習相手にするためである)。
「俺かよ。俺のせいかよ」
「ねぇ綱吉君、提案なんですけど」
呻くような綱吉をきれいにスルーして、幾分真剣な面持ちで骸がこちらを見てきた。
それに眉をひそめて、若干腰を引かせる。
「な、何骸さん」
「練習しません?」
「は?」
今回は何を思いついたんだと少々ビビりながら聞いた綱吉は、一瞬きょとんと目を丸くした。
「だから、あらかじめ練習したら少しは時間配分のコツとかつかめて、演習がスムーズにいくかもしれませんよ」
「れんしゅう…」
「そうです。綱吉君だって、さっさと演習終わらせたいでしょう?」
「そ、そりゃあ、」
まぁ…、と口ごもる綱吉に、骸は満面の笑みを浮かべた。
「じゃあ決まりですね!今度の土曜日、ウチに来てください」
珍しく一見まともでマジメな提案をする骸に、首を何度も傾げつつも綱吉は頷いたのだった。
「ねぇ骸さん、何か企んでるの?」
玄関に足を踏み入れた途端、綱吉の発した言葉はそれだった。
その言葉にむー、と顔をしかめる。
「人聞きが悪いですねぇ、せっかくの休日に会うなりそれですか?ただ土日が退屈だからちょっと綱吉君と遊びたかっただけですよ」
「え、これ遊びだったんだ!!!何これ、何あそび?!」
「…食事介助、ごっこ…?」
「まんまじゃん!!」
ネーミングセンスねー!!
首を傾げながら眉をひそめて天井を見上げる骸に、綱吉は実にテンポよくツっ込んだ。
食事は骸が用意したグラタン(食べやすそうだったので、とのことである)とサラダ、それからコンソメスープである。
飲み物は、何故か骸が持っていた幼児用のストローのついたコップに入れた紅茶。
実際病院じゃこんなあまりにも洋風だけに傾いた病院食もあんまないだろーなー、と思ったが、何も言わないでおいた。
ベッドに(零れたとき用の)タオルやら目隠し用のアイマスクやら、ティッシュやらも用意して、準備万端となったときに骸が腕を組んだ。
「じゃあどっちから介助しましょうかねぇ。綱吉君どっち先がいいですか?」
「うーーん、俺あんま手順覚えてないから…」
「じゃ僕が先に患者役になりましょうか」
「ぇええっ?!聞いといてそれなの?!」
手順覚えてないから先に患者役がいいと言おうとしたのに、何故かアッサリ患者役を申し出てゴソゴソ布団にもぐりこみだす骸に思わず身を乗り出す。
ねぇ、人のはなし聞くってこと知ってるかなぁ骸さん、とよっぽど言いたかったが、人の話聞かないんならどうせこれも届かないんだろうなと思い、やめた。
「わーー、これなんかドキドキしますねぇ!」
ちゃっかりアイマスクもして、ウキウキした様子で布団にもぐりこんで準備万端である。
なにもみえない!クフフーと弾んだ声で言う骸に、「……うん、わかった。わかったよ、俺が先にやるのな」と脱力した声で綱吉は呟いた。
(せっかくだから本当っぽくやろうかな…)
練習だし、と綱吉は頷いた。
「じゃ俺ほんとに練習するからね、骸さん患者さんね」
「はい、どうぞ」
(わぁー…)
口の形だけでも、上機嫌ぽいのが伺える。
ベッドの脇に膝をつくと、食器ののったテーブルを引き寄せて少しかがむ。
「じゃあ六道さん、お昼ごはんの時間ですよ。今日は鶏肉と野菜のマカロニグラタンと、サラダとコンソメスープですよ。サラダは…プチトマトとレタスにキュウリ、半熟のゆでたまご1/2個とコーンにツナをマヨネーズで和えたもの…」
そこまで言ってから、綱吉は口をつぐんだ。
この人はよく自分(綱吉)の名前とシーチキンのツナをネタに人をからかうが。今回のこれは一体。
「…骸さん、別に普通に作ったんですよね」
何の意図もないですよね。
淡々と聞いた綱吉に、「はい?普通に作りましたけど?」と不思議そうな返事が返ってくる。
別になんも変なの混ぜてないですよ、と心外そうに訴える骸に、考えすぎかなと思い「あ、うん、ごめん」と謝り流した。
変なのって何だ、と逆に突っ込みたくなりつつも幼児用コップを手に取ると、クフフという笑い声が聞こえた。
「え、何、次は何ですか骸さん」
「僕ツナたべちゃうんですね」
「やっぱそういうネタかよ!!自分で作っておきながら”たべちゃうんですね”じゃないよ!!」
「綱吉君が食べると共食いだ」
「もうお願いだから骸さんおとなしくなって!!」
「くふふ」
茶目っ気を交えつつ照れたように布団の端を顔の真ん中まで引き上げる。
「怖い怖い怖い!!それ可愛くないから!!」
顔はこちらに向いているが、正直黒のアイマスクで目が隠れているのでクフクフ笑うそれは不気味としか言い様がない。
必要以上にハシャぐ骸を何とか流して、ようやく食べてもらう段階になった。
「はい、じゃあどれから食べますか?」
「グラタンほしいです」
「はい、グラタンですね」
首の後ろに軽くタオルを入れて少し顎をひいた状態で寝転がってる骸に、スプーンにすくったグラタンをちょっとふーふー冷ましてから持っていく。
(え、えーっと…ナナメから食べ物入れるんだっけ)
「はい」
骸の口の端にスプーンの先端を少しつけて、開口を促す。
あ、と口が開けられると同時に、おそるおそるグラタンを口腔に入れる。
しかし骸は引き気味なスプーンをバクンと口に勢いよく含んで、もしゃもしゃと咀嚼する。
むせないかな、食べ物入れる角度は大丈夫かなとビビりながらやっていた綱吉は、ビクリと肩を揺らした。
(わ!びっくりした…)
「つ…、次はどれ食べますか」
骸が食べ物を嚥下するのを確認してから、ソロリと綱吉は骸を伺った。
「じゃあサラダで」
「は、はい」
わたわたとサラダの器を手にする。そして。
「さ、サラダのどれ食べますか」
患者さんの希望をちゃんと聞きながら、と口すっぱく教師に言われていたのを思い出した綱吉は、初学者よろしくいちいち伺いをたてる。
「あっ、じゃあツナで」
「ああ、はい、コーンと和えたやつですね」
ぱっと声を明るくした骸に、綱吉はトーンのない声で答えてあえてその単語を口にせず、ツナとコーンのマヨ和えをスプーンに掬った。
既にあーん、と口を開けているそれにスプーンを傾ける。
「ああ…、おいしいですねぇマヨまみれになったツナって。マヨネーズ単品はそう好きでもないですけど、ツナと合わさるといいですね。このグチャグチャになった感じが」
「ほかにもっと言い方ありますよねえ!?」
「マヨまみれにちょっと、なってみますか?」
「ならねぇよ!!何それどういう方向性のいやがらせ?!」
クフフフ、と楽しくてたまらないという様子の骸に、綱吉は軽く泣きそうだった。
続
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まさかのおまけ
そうとうおかしい↓
(※ほとんど変えてないのに驚くほど違和感がない)
ベッドに(色々零れたとき用の)タオルやら目隠し用のアイマスクやら、ティッシュやらも用意して、準備万端となったときに骸が腕を組んだ。
「じゃあどっちから上に乗りましょうかねぇ。綱吉君どっち先がいいですか?」
「うーーん、俺あんま手順覚えてないから…」
「じゃ僕が先に下役になりましょうか」
「ぇええっ?!聞いといてそれなの?!」
手順覚えてないから先に下役がいいと言おうとしたのに、何故かアッサリ下役を申し出てゴソゴソ布団にもぐりこみだす骸に思わず身を乗り出す。
ねぇ、人のはなし聞くってこと知ってるかなぁ骸さん、とよっぽど言いたかったが、人の話聞かないんならどうせこれも届かないんだろうなと思い、やめた。
「わーー、これなんかドキドキしますねぇ!」
ちゃっかりアイマスクもして、ウキウキした様子で布団にもぐりこんで準備万端である。
なにもみえない!クフフーと弾んだ声で言う骸に、「……うん、わかった。わかったよ、俺が先にやるのな」と脱力した声で綱吉は呟いた。
まさかのツナ上?!しかも既にプレイが変態くさい!
…失礼しました