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  初めてでしたら(3)  





はあっ、はあっ、はあっ、

「駄目ですよ…、ちゃんと名前を呼ばなきゃ…」
少し残念そうに呟く骸の声に、とてもではないが綱吉は答えられずにいた。
すっかりはだけた上半身や、おそらく中はグチョグチョに濡れた下着、ほとんど下ろされたジーンズ、
マットの上にあられもない姿で大の字になりながら、綱吉はただひたすら息をついていた。
骸はそんな綱吉の髪の毛を、額のあたりからそっと梳いた。
びく、と怯えるように震える綱吉に構わず、骸は梳き続ける。
「…まぁ、さっきは、初めてでしたから仕方ないかもしれませんね…。
でも、次はちゃんと呼んでくださいね」
(つぎ……?)
未だ整いきらぬ息をつきながらぼんやりと骸の方を綱吉は見やる。
その瞳が、徐々に見開かれていった。
モーター音が、再び、聞こえる。
「な……っ、いや…っ」
「大丈夫ですよ。次はローションもちゃんとたっぷり使いますから」
何が大丈夫なものか。まださっきの痺れるような感覚も抜けきっていないというのに、そんなの本格的に使ってさっきのところを弄られたら一体どうなるのか。
綱吉はなかば蒼ざめた顔を横に振り、震える身体を起き上がらせようとした。
「おっと。今更ここで逃がすとでも?」
が、ダンッという鋭い音と共にしたたかにマットに背を打ち付けられた。綱吉の気管からくぐもった息が漏れる。
綱吉の肩のあたりを腕で防ぐように上から押さえながら、骸は酷薄とした笑みを浮かべた。
いっそ猟奇的なまでの威圧感をもちながら、至近距離まで顔を近付ける。
「達くときにちゃんと、名前を呼べたら、逃がしてあげてもいいですよ」



 薄暗い室内に、荒い呼吸と粘着質な音が響いていた。綱吉の精液のにおいやローションの香り、汗のにおいや仄かに立ち上る熱気がこもって、淫靡な空気が滞留している。
露にされた綱吉の陰茎に、ローションを絡み付けるかのようにして骸が指を絡めていた。
顔はずっと、綱吉のほうを向いている。少し扱きを強くすると、ぬちゅ、と先走りが溢れ、脚が突っ張るように蠢いて背筋が痙攣する。
「…ッふ、ぐ……」
片手で口元を押さえて、先ほどより声を抑えている。
いいようにされるのが癪になった綱吉の、精一杯の抵抗だった。
「――まぁ、僕もそういうの別に嫌いじゃないですけど。必死に快楽を我慢する様はね。でも―――」
骸がにちゅにちゅと亀頭を親指の腹で擦ると、見開いた綱吉の目からぼろっと涙が零れた。襲いきそうな絶頂の波に、ビクビクと身体も陰茎も震える。
それ以上はと懇願するような瞳を骸に向けながら、口元に手をあてたまま刺激による興奮で真っ赤に染まった顔を左右に振る。
そんな綱吉に、骸はうっすら笑みを浮かべた。
「実にいい顔ですけどね…それじゃ、我慢できてることになりませんよ…それに、今は、そういう気分じゃないんですよね」
(―――!!)
亀頭を浅く擦っていた親指に力がこめられる気配を感じて、制止の言葉をかけるために綱吉は思わず手を離して口を開いた。
「だ、めぇ……っ!」
「今は君があられもなく悦に溺れる様子を見たいんですよ。なので…」
必死な様子の綱吉に口角を上げてから、骸は綱吉のぐずぐずに濡れた亀頭を、親指の爪で抉るようにして小刻みにぢゅぐぢゅぐと動かし始めた。
「や、ア゛、ア゛ッ、らめ、らめえぇえッ!!」
舌が麻痺したように、まともに動かない。口をうまく閉じることができず、唾液がひっきりなしに顎をつたう。
カウパー腺液によって滑りが異様によくなっている先端を爪で抉られる。このままだと尿道を全て犯される、そんな切迫した危機感すらよぎる。
針で刺されているようなビリビリしたピンポイントの強すぎる快楽が全身を痺れさせる。
先の窪みを、グリッと円を描くように爪で抉られた瞬間、綱吉は苦しくなるほど喉を反らせてビュクビュクと精液を吐き出した。
「…また、名前を呼びませんでしたね…」
まだ陰茎の先がビクンビクンと勝手に痙攣しているような気がする。
はーっ、はーっ、と弱弱しく息をついている綱吉の横で、ごく残念そうに骸が呟いた。
(…ま、まさか、このひと……)
カラカラになった喉で、ひきつれたような咳をしながら、涙で歪む目を骸に向けた。
骸は、その涙ではなく唾液に濡れた唇を親指でなぞりながら、うっそりと笑って首を傾げた。
「それとも君、ずっと僕に攻められていたいんですか?だったら別にいいんですけど」
綱吉の顔が蒼ざめる。
(やっぱり…!本気でこの人、俺が名前呼ばないと帰さない気なんだ…!)


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