大学生パラレル
であいK (3)
「人生何事も経験ですよ、綱吉君」
「い、いや、いやいや」
何の話をしてるのかな?
知らず知らずのうちに綱吉は、テーブルから離れてベッドに向かってずりずり後ずさっていた。
どん、と背中にベッドがあたる。
心の準備、一体何の準備か聞くまでもなく綱吉は危機感を感じていた。
「だ、だってほら、お喋りって言いましたよね骸さん」
「ええもちろん。お喋りしますよ。お喋りですよ」
綱吉に影を落として近づいてきている骸に、脅威を感じていやな感じに心臓がバックンバックンしてきた。
「あ、アンタの”お喋り”って何だァア!」
ダメだこれ逃げなきゃ…、と、綱吉が出入り口の扉に視線を滑らせた瞬間――
ダン!!!
「ひ…っ!」
骸の足が綱吉のすぐ横に落とされた。
その肢体がゆっくりと膝をつく下で、綱吉はガタガタ身を震わせていた。
「ま…っ、まって!待って!!俺ほんとそういうのわかんないから!!きっと楽しくないから!!!」
まるで”俺食ってもおいしくないから!”と懇願する食材のようである。
しかし骸はまるでどこ吹く風というようにニコリと笑いながら、身をかがめてくる。
「楽しいかどうかは僕が決めます。それに大丈夫ですよ、そこはもちろん、先輩の僕が先導するに決まってるじゃないですか」
「せ、先輩とか、まるで俺がこれからその道にいっちゃう人みたいな感じに言うなー!!近い近い近い!!!」
ぐぎぎ、と相手の肩を押し返しながら必死に叫ぶ。すると骸は初めて不機嫌を露にした表情を出した。
「ったく、こんなにソフトに回りくどく出てるってのに鬱陶しいですね」
(本音出た!この人本音出た!!)
「こっ、こんなはずじゃなかった!」
本当に色々、こんなはずじゃなかった!と思いながら必死に首を横に振る。
しかもこのひとやっぱアレか!優しい人とかじゃないんか!!全く話が通じなさそうだ!!
「ものは試しって言うじゃないですか。ほら、折角ですから記念に」
「記念にこんなことできるかァアア!!何その写真か何かみたいなお手軽さかげん!!」
ジタバタとアヒルのようにもがいてその場から逃げようとする綱吉の首元を、何のためらいもなく骸がキュッとつかんだ。
「っ……!!」
ひ、ひねられる?!
おそろしさと呼吸苦のあまり、目を見開いて綱吉が蒼ざめたまま固まる。
「いいから。黙って僕に抱かれればいいんですよ」
(どっ…、独裁者がいる……!!)
今ばかりは骸の帝国と化したこの部屋で、綱吉は何の力も持たぬ平民だった。
しかし、その独裁者は、
「大丈夫。死にそうなほどヨくしてあげますから」
無駄にサービス精神が旺盛だった。
…とりあえず死にたくは、なかった。
綱吉の薄茶の髪から頬を下り、おとがいにかけてすぅっと白い指を滑らす。
小さく肩をゆらして、綱吉は目を瞑った。
(な なんかこれじゃ、ほんとの…恋人同士か何かみたい っていうか…、)
「ノンケ…と云いましたね。じゃあ女の子と付き合ったことは?」
「ちょ…、ちょっとは…」
何年も前に少し。それも、キスどまりの淡いものである。
しかし何故だか少し気まずい気持ちになる。
その胸の内を知ってか知らずか、骸は綱吉の下唇に親指を這わせながら続ける。
「ではその子とキスをしたことは?」
「あ…、ある、けど、」
こんな濃い状況でされるようなのでは、決して無い。
「そう、…こんな感じ?」
瞬間、唇にやわらかいものが重ねられた。
「んぅ…っ!」
ヌルリと、抵抗のうすい綱吉の唇を押し入って、ひとつの生き物のようなソレが侵入してくる。
「あふ、んむぅ…ッ、」
喉が反って、ずるりずるりと身体が下へずっていく。
ちがう、ずいぶん前につきあった子とは、こんなんじゃなかった。
もっと、ぎこちないかんじで―――
「ふあッ、っはぁっ、――んんッ!」
息をついたと思えば、間髪いれずしてすぐまた角度を変えて唇を、舌を、口腔内を重ねられて蹂躙される。
頭がベッドの端にひっかかり、思うままに押さえつけられる。
口づけというより舌で掻きまわしながら、骸が膝を股の間に割りいれてグリグリ股間に押し付けてきた。
「あ ふャあっ!」
刺激されたことからくる快感と、その快感を感じている恥ずかしさに、どうしようもないぐらい心臓がバクバク言い出したのを綱吉は危機感と共に感じた。
やばい これ、だめだ 何で俺ふつうにこんなになってんだ
「ひぐ…っ、」
痛みとも快感ともとれる股間へのおしつけに、閉じた綱吉の目じりから涙がにじむ。
互いの唾液で潤んだ唇をペロリと舐め上げて、息を軽くつきながら骸は目をしならせた。
「ほら、やっぱり楽しいじゃないですか…」
錯覚しそうに蟲惑的な響きを持ったそれが、綱吉の耳のとおくでクラリと響いた。
香りだけは甘くほがらかなアップルシナモンの名残、その部屋に別の淫靡な空気がゆるく立ち上る。
「綱吉君。ベッドに腰掛けて」
言われるまま、綱吉はベッドに腰掛けた。
シャツがはだけられた下に露になっている肌には、既に鬱血痕がいくつか散っている。
余計なことは考えない。これは現実と認識しない。
しかし、骸が発する言葉が綱吉を現実に引き戻す。
カチャカチャと下肢の衣服をくつろげながら、骸が目を伏せ気味に笑った。
「クフ…、じゃあ、君、その彼女にフェラされたことは?」
あるわけがない。
「無…っ、」
「ハツですか」
サラリと顔にかかる分けた前髪を、耳にかけて骸はかがんだ。
綱吉の片方の足を服から抜いて、ぐっと両手で膝を左右に割り開いた中に身を潜らせる。
くぱ、と口をあけた中に見える舌を、見せ付けるように蠢かせて骸は笑った。
「…い た だ き ま す」
「やっ、やんなくてい…っ、やんなく…ふゃぁあ!!」
いきなり口腔内に陰茎を含まれ、かすかに反応していたそこから一気に拡がるような快感を受けて、綱吉は骸の頭に手を置いて背を反らせた。
吐息だけで笑うと、骸は頭を前後に揺するようにして綱吉の陰茎全体を搾り上げるようにジュブジュブいわせてキツい口淫をはじめた。
(と…っ、融けそ…!)
初めての感覚に、息の仕方を忘れたようにヒハッ、ヒハッ、と綱吉は喘ぐ。
ジュルぅう、ジゅプッ、と盛大に音をたてて繰り返されるそれに、ヒクンッ、ヒクンッと綱吉の背が跳ねた。
頭の上に置かれた手に力が入るのも構わずに、骸は陰茎の裏スジに舌を這わせながら睾丸を緩急つけて揉みしだく。
「あっ、あ゛ーっ、ヤッ、らめっ、ひぃい…!」
とうに意味のある言葉など無い。
僅かな時間にあっというまに痛いほどに赤く張り詰めた陰茎に口角を上げてから、骸は先端がすっぽりおさまるように口に含み、先走りを竿にしたたらせながらそれを利用して扱き上げる。
それに加えて、先端の割れ目にグチュグチュ舌先を擦りつけ、陰圧になった口腔でヂュッ、ヂュぷッ、と吸い上げる。
たまらない。
太腿の裏から足先に抜けるようなビリビリした強すぎる快感に、綱吉の膝が小刻みに震えだした。
(だ だめ、 も――)
「ヒッ、いぃい、ヒャ…ッ!!で ひゃうう…ッ!!!」
「どうぞ。最後まで」
陰茎をこすりあげながら、ぞろり、軽く歯をあてて先端を苛めた瞬間、頭の奥を灼ききるような強い刺激が綱吉の頭の中で弾けた。
「いグ…ッ、ひ ――――ッ!!」
焦点のあってないままに目を見開いて、天井をあおぐように背をそらして一瞬止まる。
ゴクリ、と骸の白い喉が精液を嚥下したとき、バタンッ、とベッドに綱吉の上半身が落ちた。
ガクンガクンと、余韻のように痙攣する下肢を両手でおさえて、最後の残滓までもヂュる、ぢゅうっ、と啜りあげる。
「ひ…ッ、ひぃい……ッ、」
ぢゅぱ、と先端から口を離してから、骸は自らの唇をぺろ、と舐め上げた。
「ああ。あっという間でしたね。これは今後訓練しなくては―――とりあえずはごちそうさま、イイ味してましたよ。君」
まだ先端が、じんじんしてるみたいで息は落ち着かなくて、綱吉は肩を上下させるばかりでろくに返事も返せなかった。
続