看護学生パラレル

  ばれんたいん  


ぶっちゃけ綱吉とか管理人は行事ごと基本的にスルーなのですが、いかんせん骸さんが。
小ねたにするつもりだったけどちょとだけ長くなったのでセイヤとあげる 特にどうということもないです


看護学生パラレル・四年生・既にできてるってことで



看護棟のラウンジで綱吉が勉強していると、見覚えのありすぎる人影が存在感を撒き散らしながら綱吉の前にやってきた。
「………」
無視して勉強していると、ガッと椅子をひいてその人影は椅子に座る。
「綱吉君、ハッピーバ」
「無いですから」


「…………」
「無いですから、たとえ今が盆正月だろうと無いですから」
黙々と勉強を続けていると、ガサゴソと骸は何か箱を取り出した。
「……そういうと思って僕自分で生チョコみたいなの作ってきちゃったじゃないですか!」
「作ってきちゃったのォオ?!すごいね!!何やってんの!」
ほら、ほら!と黒い箱を開けると中にはどっかでお高く売ってそうな、ココアのかかって四角く切られた生チョコ的なものが入っている。
「うわ、ほんとに作ってるよこの人……、」
「はい、はい綱吉君、食べて下さい」
「あッ、いやっ、今はいいですよ後でね、骸さんが食べればいいじゃないですか」
「イヤですよ」
先程昼飯を食べたばかりで満腹だし、今お菓子を食べると気が緩みそうだから…と辞退した綱吉の耳に、チッという舌打ちが聞こえたが聞こえなかったことにする。
そもそもやたら洋酒の香りがキツくて口に含んだだけで眩暈でも起こりそうである。


とりあえず閉じられたチョコの箱を眺めながら、綱吉は頬杖をついた。
「あー、そういえば骸さん、豆まきもしてたもんな。ほんと意外すぎるけどマメに行事を踏襲していくよね骸さん」
「あのときの”鬼はお前だろぉおお!!”っていう綱吉君の顔ったら…」
プッ!クスクスと失笑する骸に、ぎりりと拳を握る。
「勘に障るなぁその笑い方…!痛かったよアレ!痛かったよあの豆!!」
「ほんと、楽しかったですねぇ君涙目でしたもんね、クフフ」
どうしようもない事で照れるように笑う骸を見ていられなくて、綱吉は視線を外した。
「っていうかさ、邪魔しないでよ骸さん、俺骸さんと違って今やんないと国試ヤバいんだから…!!」
「まるで僕が何もしてないみたいに言わないでくださいよ。ちゃんと勉強してますよ」
明後日の方向をどうでもいいような眼差しで見ながら言う骸に、綱吉は思いっきり疑わしい目を向けた。
「ウソつけお前!まさかいつもやってる俺の過去問題集をパラパラめくっては『ハッ、この選択肢ちょっと不適切なんじゃありません?現場でこれはちょっと無理があるでしょうに』ってさんざん文句つけるのが勉強だとか言わないよなあ!」
「勉強になるでしょ綱吉君、僕のアドバイス」
「ただ俺を混乱させるだけだからやめて!!」

相手をしていればどこまでもどうでもいい話を続けそうな骸に、綱吉は頭を抱えた。
「うわやっぱ今日ラウンジ来なきゃよかった…!図書館で勉強してればよかった…!」
「図書館だろうが僕は現れますよ、現に昨日居ましたし」
「あれっ、そうなの?珍しいね」
たいていは喋ることのできる場所にあらわれていつも邪魔をしてくるのに、図書館なんていうおとなしい空間に現れるとは意外だった。
こんな人でも図書館をまじめに利用するんだ、と綱吉が感心していると、骸は至極マジメな顔で頷いた。
「昨日はちゃんとおとなしく、君のすぐ後ろの席に座ってずっと見てましたよ」
「怖ッ!!もっとほかにする事あるだろお前!!頭おかしい人みたいだよ?!」
「失礼な。僕は自分に必要だと思ったことしかしてないだけですよ」
「ストーカーまがいのことがかよ!」


もうだめだ、無視して勉強再開するぞと参考書を開けると、骸の手によってそれがバタンと閉じられた。
「ちょ…っ、」
「まだこれだけじゃないんですから。他にもあるんですよ」
「そっか、そりゃすごいなぁ、すごいから本開けさせて」
ぐぎぎ、と参考書をあけようとするが、参考書の上から置かれた骸の手が異様に強い力で押さえつけているため開けられない。
「僕は好きじゃないですけど、ショコラリキュールを買ったんですよ」
「俺も特に好きじゃないから何のために買ったのかわかんないねそれ」
「好きじゃないものを無理矢理呑ませるのがイイんじゃないですか!」
「うわ…っ、キラキラしてるこの人…!!」
「それだけじゃないですよ、なんと、ココアの香りのするローションを手に入れ」
「いいから手ェ離せェエエ!!」
びりっ
音をたてて、参考書の一部が破れた。
「!!」



「とにかく、とりあえず今日っていうかここ十日間ちょいは無理だから!いろいろ!」
くぅっそ本破かれた!!と涙目で本をセロハンテープで修繕しながら、綱吉はやけくそに叫んだ。
「そんなに哀しいのだったらその本買ってあげましょうか」
「いいよもう!時間をくれよ!!」
切実にそう叫ぶが、骸はノーリアクションである。
ビッとテープを切ってだんだん張る綱吉の手元を、骸は視線を伏せがちにして無言で見つめていた。
やがて片手でその手を取る。
「ちょ…、むくろさ」
綱吉がすん、と鼻をすすって咎めるが、骸はその指元に唇を近付けて、うすく口を開いたかと思うと、
「―――ッ」
カリ、と軽く指先を噛んだ。
指先をちろちろ舐め、食まれて、その甘みを伴った微かな痺れに綱吉は息をつめた。
「厭です。それは聞けない。今日がいい。もう何日お預けくらってると思ってるんですか。いいかげんにしないと無理矢理襲――」
「わかったから!!!」
本気じみたその眼差しと指先への刺激に、ぞくりと綱吉の背筋が震えた。
以前本気で学校内で行為に及ばれたことがあるだけに、冗談だと思えない。
バッと手を振り切ると、骸はにこりと目元を細めた。
「それはよかった」
「ああわかったよ!!だからここで変なことするなよ、あと今日以降はもう試験の日まで応じないからな!」
声をひそめながらぎゅ、と拳を握る。正直自分の台詞の後半部分の願いは、聞き入れられる気はしない。
「わからないところは後でいくらでも教えて差し上げますよ」
案の定、今日以降はしない、とはいわずに骸はにっこり笑った。
脱力して綱吉は頭を垂れる。
「くっそその言葉忘れんなよ、心電図と脳血管疾患と女性ホルモンの排卵機序のとこと腎臓関係と――」
「ええ、なんなりと」
そのかわり僕のお願いもきっちり聞いてもらいますけれど、という言葉はあえて言わずに骸は綱吉の手を両手で包んだ。

だってバレンタインって愛の交歓、もとい交換でしょう?


明日は午後から勉強か、と項垂れる綱吉の期待は裏切られることになる。
久しぶりにはしゃいだ骸に一日拘束されるため、勉強は明後日から、が正しい結果だった。



つづかにゃいよ ごめんち

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