大学生パラレル

  ゴム攻防  


大学生二人パラレル。既にデキてる人らです。
アレすぎるアホなことでギャアギャア喧嘩する二人





夜も更けた、骸の部屋のベッドの上。しずかな部屋。
綱吉をベッドに縫いとめて、骸は顔を落とした。
「ね、いいでしょう?」
了承が得られるものと確信しての質問を囁きながら、やや早急気味に首筋、鎖骨にキスを落とす。
「ん…、骸さん、あのさ、」
止めたってこの男は大して聞きゃしない事を綱吉は身をもって知っていたし、別に自分もそんな気分になってたから駄目ではないのだが。
ごそごそと自らのポケットをまさぐって(ちなみに骸の手は既に綱吉の上のシャツの下をまさぐっている)、平べったい四角の包みを取り出す。
骸が綱吉の唇に口付けを落とそうとした瞬間に、サッとその包みを間に滑り込ませる。
その包みによって、キスが阻まれる形になった。
「……なんですかこれ」
判らないわけがないだろうに、ぶすっと質問してくる骸に、その体勢のまま言い聞かせるように綱吉は口を開いた。
「つかお?使おうよコレ」
しかし骸は目を眇めてその包みを手に取ると、ぺいっとベッド下に投げ捨てた。
何の存在感もなく落ちていく、コンドームの包み。
「あーー!!ちょっとォオオ!骸さァアん?!」
こいつ投げ捨てやがった!!とガバッと起き上がろうとして、
ガツンッ!!
「〜〜〜〜ッ!!!!」
「〜〜〜〜ッ!!!!」
思いっきり骸の顔面に頭をぶつけた。
二人してめいめいの箇所を両手で押さえながらしばし悶える。
「い…ッ、何するんですか綱吉君!!」
いたいじゃないですか!と、涙目でキッと骸は綱吉をにらむ。
「そりゃこっちの台詞だよ!!何投げてんだよ骸さん!」
同じく涙目でにらみ返しながら、綱吉は自分の頭をさすった。痛いのはこっちだって同じだ。
「だってあんなんいらないじゃないですか!」
ちょ…ッ、あんなんとか言うな!お前が毎回毎回いっつもいっつもいっつもゴムなしでヤるから、俺がせっかく買ってきて用意したんだぞ?!」
「はぁ?ゴムぅ〜?」
思いっきり顔をしかめる骸を思わず殴りたい衝動に駆られながらも、綱吉は必死に食い下がった。
「そりゃー俺は女の子じゃないから妊娠とかはしないけど、それだけじゃないだろ?!自分の身体ぐらい自分で守らせてよ!!」
「クラミジアも淋菌もトリコモナスもカンジダもHIVも肝炎ウイルスも、君以外の相手を断ってから潜伏期間も考慮して検査しましたけど僕ネガティヴだったじゃないですか。B肝なんか常人の30倍は抗体ありますよ?!これ以上何を望むっていうんですか!!」
自分の主張がこの世界のスタンダードだとでもいうような逆切れ状態の骸に、綱吉はバフバフとベッドを叩いて猛然と抗議した。
望むよ!!!病気が無いのは当たり前の前提条件だよ!!!下痢になるんだよ!たのむよ!!!」
「だからそうなったときは僕が面倒みるって言ってるじゃないですか!そもそも綱吉君はすぐ下痢になりすぎですよ!」
「だってお前なげーんだもん!!一回につき入れたまま毎回お前何回出してるか知ってるか?!4回はするだろ?!なるよそりゃあ下痢にも!!途中で潤いがなくなってきたからって俺のとかお前のとか潤滑液とか足してさ、俺ん中に入れてさ、お前一体俺の腸内を何にしたいんだよ!!」
「僕ので満たしたいだけに決まってるじゃないですか!」
「だああもう話通じねーー!!」
憮然とした表情で腕を組んで高らかに宣言する骸に、綱吉は思いっきり頭を抱えた。
しかし、駄目だ駄目だ。ここで一旦落ち着かねば。戦いは落ち着きを失ったほうの負けである。
フーーー、と息を吐いて、綱吉は顔を上げた。
「使おうよ。どうにか使おうよ」
「せっかくなんだからナマで出させてくださいよ。ナマのほうが気持ちイイんです」
しかし相手もしぶとかった。
「いやっ、ちょッ、すごい台詞だなお前。そんなこと言わずにさ」
「いやですよ」
「じゃあどうせ出すんなら出してから出そう。な!外に出してから」
ニコッと笑って両手をパンと合わせる綱吉に、骸は嘲るような笑みを見せて自分の両耳に手をあてて塞いだ。
「はぁ?言ってることの意味がわかりまセーーン」
「ッのやろう、ふざけんなよー!」
意味のわからないガキのようなこの男の前で、落ち着くなんて無理だった。




ぜえ、はあ
ベッドの上で二人の男が両手をついて肩で息をする。ただの口論の結果で、である。
「ック……、なかなかしぶといですね…」
「しぶといのはどっちだよ…、やだからね俺骸さん、ゴム使ってくんないと。今回ばっかりは。っていうかこれからは」
お互い若干疲弊した表情をあげて、しばし息をつく。
やがてしばらくしてから、顔をしかめて骸が呟いた。
「綱吉君、そんッッなにゴム使いたいんですか」
「骸さんこそ、そんッッッなに生でやりたいの?」
「したいです」
即答かよ……
綱吉はガクリと頭を垂れた。
「もうほんと今までよく俺下痢便途中で出さなかったなぁって思うよ…」
「出せばいい!」
何言ってんの?!いやだよ!!ださねーよ!!
コイツ本気でこんなこと言ってんの?!と骸の爆弾発言に目をむく。
「もう何でもかんでも出せばいいじゃないですか、精液も尿も便も変わりませんよ」
変わるよ!!!お前自分が言ってることわかって言ってる?!」
いつのまにかゴムどころではないデッドラインを越えられそうな話になっていて、綱吉は焦って越えられそうにない一線を死守する。
骸はぶすっとぶすくれた表情をしている。
いや、そんなむくれられても。



「俺だってさ…、っ、はーー、」
大仰にため息をつく綱吉に、骸は眉をひそめる。
「なんですか」
言いにくいから、言葉が詰まるのだ。綱吉は、視線を斜めにずらした。
「俺だって…、したいよ、気持ちよく。だってそりゃ骸さんとエッ…、すること自体は気持ちいいよ?好きだもん。でもさ…、二日酔いみたいなもんでさ、次の日体の具合悪くなったら、せっかく気持ちよくできたとしても、”ヨかった”って思えないんだもん」
相手を否定せず、下手に出てまるめこもうと巧みな交渉を繰り出す。
骸ほどおそろしく弁がたつわけではないが、綱吉だってなかなかのものである。大学において心理学等の授業で習った対人術の濫用の一例であるが、これは綱吉自身が本来持っている気質も役に立っている。
だが小手先の技術だけでなく今回のこれは結構な割合で本心なので、羞恥のために骸を直視できない。
しかしながらこの本心が効くことも、綱吉は経験上よく知っていた。
「綱吉君…」
「そりゃ骸さんの気持ちだってわかるけどさ、でもさ……わぷっ?!」
もそもそと言い募っていた綱吉は、いきなりぎゅうう、と抱きしめられて目を白黒させた。
「わかりました、そんなふうに思ってたんですね」
僕とするのがいやなわけじゃないんですね、とぐりぐり頭を綱吉の頭に擦りつける。そっかぁ、僕とするのやっぱり好きだったんですね。
だいすき。だいすき綱吉君。という声が聞こえてきそうなほど感極まった顔ですりすりしている。
「むっ、むくろさん…、じゃあ…」
やった、効いた!とばかりにぱぁっと顔を輝かせて綱吉が顔を向けると、にーーっこり笑って骸は頭を離した。
「でもやっぱり5日に1回はナマでさせてください」
「はあ?!俺の話聞いてた?!」
(一見)相手を慮る(ように見える)交渉術も、このジャイ○ンの前では無意味だった。
しかもというかお約束というか、相手の要求のほうが果てしなく理不尽である。
気分的には、せっかく並べたドミノを一薙ぎでメタメタに崩されるのに近い。ゥオオイ!と叫ぶ暇すらない。
「あーー、いや、それじゃなんか計算が微妙ですね。一週間に二日はナマでさせてください」
「今何気なく頻度増やしたね?!計算て何の計算だよ!!」
「あと、口腔内で出すんだったら下痢になりませんよね?ああ、綱吉君にクチでゴムつけてもらうのもイイですねぇ〜」
フェラ三昧かぁ、と明るい声が響く。
眉を下げてにこーーっと無邪気そうに笑う骸に、拳が震える。
「こッ、こいつ……ッ!!」
「それから偶には外でもさせてくれるっていうんなら万々歳ですよ」
「いーかげんにしろーー!!」
実に綺麗に右アッパーが決まった。




その後、致死的かと思われる攻防とついでにいつもの営みが繰り広げられた末、一週間のうちゴムを使わないのは一日だけということが取り決められた。
更に綱吉が拒んだときはそれを承諾するという、骸にとっては苦々しいオマケ付きである。
それもこれも、綱吉の
「お前そんなに言うんだったらもう俺骸さんのところにそもそも来ないから!ずっと山本んとことか獄寺君のとことか夜な夜な泊まって渡り歩くから!!」
という本気の目と声に、冗談じゃないとなったからである。
別に骸は、山本や獄寺のところを渡り歩く綱吉を追いかけてその場で致すぐらいは屁とも思わないが、
そこまでいったら綱吉が本気で自分を拒絶して何年か軽く存在を否定されそうな気がしたので、譲歩した。
それだったら、今ここで相手の要求を幾分かのんで、好意を得ていたほうがずっといい、と心の中で頷いた結果、こうなったまでである。
まったく、本当に、
「手間のかかる子ですねぇ」
素肌に心地よいベッドの中でふわ、と髪の毛を撫でると、どっちがだよ、というぶすっとした声が聞こえた。





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