大学生パラレル

  えろくりすます(2)  




「っ……、」
きつく気道に吸い込んだ香りに、綱吉が軽く息を詰める。
開けた瞬間から揮発していくブランデーの香りが、室内にひろがっていく。
あまり酒を呑むほうではない綱吉は、その香りの強さに思わず目を伏せて大きく息を吐いた。
「結構いい香りでしょう?取り寄せたんですよ」
そう言って綱吉のもとまで戻ってくると、軽く瓶を傾けてそれをあおる。
(うわ…っ、)
そのアルコールの強さを想像して綱吉が顔をしかめると、ニヤリと笑った骸がそのまま顔を近付けてきた。
「や…っ、やだやだちょっとまっ…!!!」
うつされるなんて冗談じゃないと綱吉が必死に首を横に振って逃げようとするが、その顔を両手でしっかりと捕らえて半ば強引に口づける。
「〜〜〜〜!!!」
無理矢理口を舌でこじあけられると、ツンと抜けるような強烈な洋酒の香りが口腔にひろがり、トロリとした液体が入ってきた。
「…っく、、ふぅ…ン…っ、」
口を塞がれているので、鼻でしか息ができない。
アルコールが口から逃がせないので、口腔内のあつい温度でどんどん揮発していくそれは、凶悪なまでに綱吉のなかに拡がった。
口腔内にその液体をとどめていると、グイっと首を起こされた。
自動的に、強烈なアルコールをストレートでゴクリと嚥下する。
「ふぁ…っ、は…っ、」
ブランデーの流れていくそばから、食道がどんどん熱くなっていく。
綱吉が息をついていると、二口目を口にした骸が間髪入れず唇を重ねてきた。
「は…ッ、んんぅ……っ!!」
ぎゅう、と目を瞑る綱吉の口腔に、先ほどと同じように濃い飴色が流れ込んでくる。
唇が離れたときに吐き出そうと、口腔にとどめていると香りが鼻腔まで犯していく。
頭がくらくらする。本当におかしくなりそう。
あつい。顔があつい。
「…ん〜〜〜!!!」
涙目でどんどんと骸の肩を叩いて、離れろと意思表示するも一向にそれは聞き入れられず、それどころか更に深く口を重ねられる。
ブランデーの香りに染まった唾液で舌を絡められれば、たまらず酒まで一緒にのみこむ。


「はあっ、ぁ、は、っふ、…」
何回かその口移しがされた後には、綱吉の意識は強い酩酊感にとらわれていた。
「く らくら、するぅ…、」
緩慢な意識のままに言葉が漏れる。舌がうまく動かない。指先まで熱い。
はぁ、と、吐く吐息もあつい。
「クフフ…、でしょうね…ああ、ほら、君、そういえばここ触ってほしかったんでしたね」
愉悦を隠せない様子の笑みを漏らし、骸がおもむろに綱吉のふるえる陰茎に指をからめた。
先走りとクリームがまとわりつくそれは、にちゅりと音をたてる。
「んんん…っ、!あ や ぁ、う」
ゆるゆると動かされるもどかしい指の動きに、綱吉が思うまま腰をすりよせると、クハッという笑いが響いた。
「どうしたんですか…?こんなんじゃ、足りませんか」
顔を寄せると、骸の首に腕がまわってきた。
「たらな い、たらない…」
白痴のように単語を繰り返す綱吉の唇に舌を這わせ、ちゅ、と吸い上げる。
すると熱をもった舌があちらからも伸びてきて、しどけなく口が開かれる。
「どうすればいいですか綱吉君…?こう…?」
開かれた口を遠慮なく蹂躙しながら、裏スジをきつめになぞりあげると、ぶるる、と綱吉の身が震えた。
「そ……っ、ン、ふ、もっと、さきも、」
キスの合間にあえぐように要求を口にする綱吉に、骸は口角を上げた。
もっと。もっと言って。
君が望むままに応えて、君が望むままにどろどろに融かしてあげますから。
「こう…?」
「ひ、 いぃん…っ!!」
言われるまま、亀頭の割れ目にぬぢぬぢと親指の爪をめりこませると、電気を流されたように背筋を跳ねさせた。
「そこぉ…っ!、いい、よぉ…っ、きもひぃ、よぉ…っ!」
ぢゅぷぢゅぷにぢゅ、先ほどより多く溢れてきた先走りを指に絡めて亀頭をえぐると、ブルブル震えながら綱吉が白い首をおもいっきり反らす。
「…ァ、ぁハッ、ぁはっ!イ、イ…ッ!」
「まだです」
足の先まで電流が走るような感覚を、ひっきりなしに与えられて息が止まりそうになったとき、急に限界まで張り詰めた陰茎の付け根を握りこまれた。
そのまま、何かで付け根を縛られる。
「ひぐ……ッ?!」
狂いそうなほどの熱が、無理矢理せき止められて体内で暴れまわる。



「死にそうなぐらい、悦がる顔をもっと限界まで見せてくださいよ」
興奮に息を弾ませた骸が、震える陰茎への戒めはそのままで、何かを綱吉のアナルにあてがった。
「つめら…っ、」
「すぐ熱くなりますよ」
その瞬間、何かが綱吉のなかに流れ込んできた。
(――――!!!)
「アっ、あつぅ…っ!!や、やだ、やだ!…っ、」
涙を滲ませながらあくあくと出来ない息をしていると、次はヌルリと骸の指が入ってきた。
「何言ってるんですか、ココ、こんなに美味しそうにヒクついて呑んでるじゃないですか」
グチュグチュと中をかきまぜて塗りこめながら、吐息だけで骸は笑う。
「っひ、い、ひん!」
グリュッと円を描くように指を回されれば、ビクンッと身体が跳ねる。
その耳元に骸が顔を寄せる。
「美味しいですか?下からのブランデーは」
40度を超えるアルコールの原液を、血管の豊富な直腸へと流し込んでいるのだから、普通の口で呑むよりも回りが格段に早い。
ドクドクドクと、いつもよりかなり速い脈を感じて綱吉は息を荒げていた。
「あつ い、あつ、いぃ…、」
頭がクラクラして身体全体が熱い。意識がフワフワ浮いて周りのもの全てが緩慢に感じる。
四肢に力が入らない。筋肉が弛緩しきっていた。
「ク…っ、たいしてほぐす必要もないですね、ひどくだらしないですよ、君のココ」
ズルリと抜かれた骸の指と共に、タラリとブランデーが垂れ落ちて尻をつたう。
その感覚に綱吉は吐息を震わせた。


ブランデーと綱吉の先走りに塗れた手で、いとおしむように太腿を撫でさすりながら、それをゆっくり押し開く。
「ああ…、もう何の液なんだかわかりませんね…」
恍惚とした笑みを浮かべながら骸は身体を近付けた。


ずりゅ、と、痛いほどに張り詰めている陰茎に身体を押し付け擦られる。
「ひゃああ、も う、 ねが、い、くるし」
もう戒めを解いてほしい。
朦朧とした意識の中、縋るように骸の腕を掴むが、返ってくるのは吐息での笑み。
―――と、
「――――!!!」
ズぢゅうう!
圧倒的な熱の塊が、綱吉のアナルを限界まで広げて押し入ってきた。
ひゅううっ、と一瞬息をのんで綱吉が身体を硬直させる。
グッグッグ、と小刻みに陰茎を入れ込んでいくかのように腰を揺すられる。
「アッ ぁあ、ア゛」
唾液が垂れ流しになっている口から、呻きとも喘ぎともつかぬ声が漏れる。
その口を、骸の口唇が塞いだ。
再び、噎せ返るような洋酒が口腔に流される。
「んグ、ふぅ…ッ、」
既に所在無さげにとろけている綱吉の目が、いっそう遠く細められる。
理性という抑制などとうに外れている綱吉は、絡んでくる骸の舌を追うように自らの舌を緩慢に絡める。
骸の肩に縋っていた腕は、いつのまにかその首へと回されていた。
興奮の涙で歪む視界を瞬きすると、つう、と涙がつたって落ちた。
開かされた足を骸の背に絡めると、ずるう、腰を引かれて、
ぬぢゅう、入れられて、そのままピストンが開始される。
「あっ、あっ、あっ、んっ」
既に余計なことなど考えられない綱吉は、揺すられるままに声を漏らす。
片足の膝裏に手を入れられて、ぐっと高く上げられて突き上げられる角度が変わる。
「あッ、そこッ、ひぃんっ!」
イイ角度を熱く擦りあげられて、綱吉は思いっきり喉を反らせた。
「ふ…ッ、っく、ココですね…」
片頬をゆるめて骸が前立腺付近へのストロークを更に速める。
そのまま綱吉の竿を扱き上げて鈴口をグチョグチョいじくると、快感のあまり跳ね上げるように背を反らせて綱吉が絨毯にガリリ、と爪を立てた。
「はひ…ッ!」
一瞬視界が白くスパークしたような絶頂感を覚えたが、戒められたままの真っ赤に怒張した陰茎からは何も出されず、鈴口がヒクつくだけである。
同時に、アナル付近の筋肉もビクビク収縮して、ギチギチと綱吉を貫く骸を締め付けた。
その締め付けに、骸は口角を上げて顔を歪める。
パタ、パタリ。クリームと精液でまみれた綱吉の腹部に、骸の汗が落ちた。
「ッ…、君にあまり違法のものは使いたくありませんが、
強めのドラッグでも使ってみたく、なります ね」
は、と息を吐いて、更に追い上げるように腰を進める。
抉るように穿たれて、ピンポイントでイイところを突かれて、しかも前も扱かれて、頭がめちゃくちゃに快感にもっていかれそうになる。
限界まで追い上げられて、綱吉は泣きながら首をはげしく左右に振った。
「も、 ひィ、漏れちゃう、漏れひゃうぅう!!」
狂ったように声を上げる綱吉に、恍惚の笑みを浮かべてから、骸はわめく綱吉の唇を食むように口づけを落とした。
「かわいい…、綱吉君」
そうしてギチギチに張り詰めた陰茎の戒めを解き、回すように奥を穿つ。
「――――ッ、――ッ!!!」
飛びそうな意識の中どぴゅどぴゅっ、と勢いよく長く綱吉の精液が吐き出されてから、追い討ちをかけるような熱が奥にかけられたのを感じた。







もうだいぶ日も高く昇った次の日、うすぼんやりと目を覚ました綱吉は、頭痛に顔をしかめた。
「…〜〜〜、あ゛ーー、気分わるい」
緩慢な動作であたりを見回しても、骸の姿がない。
目にとまった時計を見て、綱吉はため息をついた。
14:07。
「……もう昼過ぎだし」
一日をひどく勿体無く過ごした気分に見舞われながら、起き上がろうとして、やめた。
なんか身体は綺麗になってるし服も着てるので(翌日に上機嫌で色々してくれる変態が一名いるためである)、急いでシャワーを浴びなくてもいいかなと思ったためだった。
少し離れた部屋から物音がする。扉のほうに顔を向けたら、ひどく機嫌の良さそうな骸がひょこっと頭を出した。
「あっ、綱吉君起きたんですね。おはようございます。ちょうど朝ごはんができたところなんですよ〜」
ニコニコ笑いながらお盆片手にやってくる。
綱吉の近くにしゃがみこんで、お盆をそこに置く。
ホコホコ湯気をたてるそれは、結構な頻度で骸が作るリゾットだった。
それを一瞥して、ぽつり、綱吉が呟く。
「…骸さん。俺、なんか頭いたいんだけど」
お前が昨日無理矢理呑ませやがったアルコールのせいであたまいたいんだけど。
その呟きに骸は盛大に眉を下げてさも心配そうな顔になる。
「あああ、それは大変ですね、フルーツとかもあるから持ってきましょうか」
やおら立ち上がって、パタパタと台所へ向かっていく。
無言でそちらを見ていると、やがて笑顔で林檎とナイフ片手に骸が戻ってきた。
「今むきますからね、」
ホクホクした笑顔で甲斐甲斐しく林檎の皮をスルスルむく骸を、綱吉は何ともいえない複雑な面持ちで見つめる。
「…ねぇ骸さん」
「なんですか?」
「もしかしてさ、まさかとは思うけどいつも夜がひどいのって次の日新婚ごっこみたいなことしたいから?」
(あ、うわ、こういうの実際言うと結構破壊力あるなー)
自分で言って綱吉は恥ずかしくなり、ひたすら林檎だけに焦点を合わせた。
「へ?」
しかし骸はきょとんとした顔でこちらを見ている。
「しんこんさん?」
間があいたあと次の瞬間、ばきゃっと音をたてて林檎がつぶれた。
「な、何恥ずかしいこと言ってんですか綱吉君ーー!」
「えええええーー?!危ない危ない危ない!!!」
俺そんな、林檎つぶしちゃうほどひどいこと言ったァア?!
えッ、てかっ、じゃあどれもこれもただ素で楽しんでるだけかいこの人は!!
まどろっこしいことは別に何も考えてないんだ実はこのひと!!
「あ…、あー、もう、林檎つぶれちゃったじゃないですかー…、」
「え、いや、それ俺のせいなのかな?普通びっくりしたくらいで林檎つぶれるかな?
「仕方ないなーもう、綱吉君のせいですよ。欠片だけ残ってるんでせめて、はい、あーんしてください」
家ではたまにやるので、雰囲気で自然と「あー…、」と口を開きかけて、ばくんと綱吉は口を閉じた。
そのままふるふると首を横に振る。
「?どうしたんですか綱吉君」
「…いい。なんか、自分で食べる」
「なんでですか。せっかく」
「いいから。それより骸さん、俺のどかわいたな、なんか飲み物…」
昨夜のことが軽くトラウマになってフラッシュバックしそうだったので、なんて正直に言うと面白がって朝からサカられそうなので、黙っておいた。
その代わりに、骸と知り合ってから身につけた若干狡猾な甘えを切り出す。
「あっ、本当だ、飲み物がありませんでしたね。待っててください、」
立ち上がって再び台所に行く骸に、はーと安堵の息を吐いた。
何がいいですかー、と聞こえてくる声に、オレンジジュースうー、と間延びした答えを返してから、くああ、とあくびをして伸びをした。
うすく瞼をあけた間の視界からは、抜けるように晴れた空が見えた。
寝てたのが勿体ないくらい、天気がいい。
その青空に重なって、綱吉くーん、リンゴジュースもありますけどーと聞こえた少々間の抜けた声に、ちょっと笑った。





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